シリコンバレーにおけるリスクの考え方

飛び込むか、避けるべきか。
海に入ればコントロールできるのは自分自身だけ。

 

シャープが今期の業績を2500億円の赤字へと下方修正した。驚くことに自身の時価総額以上の赤字をかかえることになる。IRを読むとやれ「市況の悪化」だ「国内液晶テレビの需要減」といった、そんなのあらかじめわかってるはずだよね?と首をかしげたくなる文言がならぶ。

というか、こんな危機的な状況になってまで原因を外に求めている姿勢が非常に疑問。内部留保はものすごい勢いで減ってきており(3ヶ月で2599億円から1160億円へと半減)、今年9月15日に100周年を迎える会社が次代まで生き残れるかの瀬戸際に立たされている。

シャープにせよ、ソニーにせよ日本の決算発表を見てると、所与の条件である外部環境に対して「XYZが起こってしまったからこうなった」と言ってるようにしか見えないのだ。

シリコンバレーで生きる企業は皆、「外部環境はコントロールできない。コントロールできるのは己自身のみ。」という意識がトップから下へ徹底されている。だからこそ今、「自分たちが」しないといけないことはなんなのか?それがどのように、カスタマー、競合、業界に対して「違い」を作っていくかを日々追い続ける雰囲気が節々に感じられる。「想定外」が起こってしまうことも日常茶飯事のこの地において、原因を外に求めることはプロとしての姿勢を疑われるのだ。

明らかに潰すべきリスクでない限りは、外部環境がどうであれリスクはネガティブ要因とはみなさない(言い訳にしない)。シリコンバレーでRiskと言えばTakeするもの。そしてRiskを抱えた自分をControlする。

事前にきっちり準備しておくのか、事後でよしとするのか、キモとなる所だけおさえてあとは基本無視といったハイブリッド的なスタンスでいくか、これらのアプローチを組み合わせてリスクによる悪いインパクトを最小化させようとする。

日本の良い所でもあり悪いところでもあるのが「全て」のリスクを潰そうとするところ。減点法で人も製品も評価してしまうところ。だからこそ圧倒的に完成度の高い製品ができるのは事実だが、それをしている間に他の競合は2,3歩先に行ってしまっている。気がつけばマーケットの大半を奪われ、挽回するのは難しという状況に追い込まれる。

無論、ユーザー側が求める「質」のレベルが違うというのも1つの原因でもあるが、これとて「所与の条件」にすぎない。日本の消費者・ユーザーが世界一品質にうるさいのは、もはやシリコンバレーの会社だって知ってる。

リスクは全て潰せるわけでもないし、全てのリスクを洗い出すことも不可能。日本が競争力をもう一度取り戻す上で、「自分でリスクをコントロールするという覚悟で、リスクを取りに行く」という視点ががもっとあってもいいはずだ。

 

Picture source: http://www.nps.gov/pore/planyourvisit/beaches.htm

 

プロダクトマネージャーの仕事をサッカーで語ってみる (その1)

ここ最近サッカーの世界では大きなニュースがいくつか続いた。なかでも注目だったのは、先日の日本 VS オーマン戦で、爽快な試合をしてくれた日本代表。香川がマンチェスターユナイテッド移籍を確定させ、まもなく欧州選手権が開催、グアルディオラ監督がバルセロナを去ったこと。どれも1つの記事になってしまうくらいのニュースだが、そんなサッカーモードな状態で本日のお題、プロダクトマネージャーの仕事について書いてみる。

(かなり主観で書くのと、サッカーに興味のない人は読みづらい可能性があるので、見苦しい所は飛ばしてください)

シリコンバレーで働いていると、時々サッカーをプレーしているような錯覚に陥る時がある。
(別に場所がシリコンバレーである必要はないかもしれないが)

なぜか?

それは、こちらの働き方が、各々の磨かれたスキルを持った個人が連動してチームという組織で動くからだ。ふと思い立って、ブラジル人の同僚に下のようなフォーメーションを見せてみたらこれが大ウケ。彼も同意してくれた。

ゴールをあげる(= ディールをクローズする)という観点で各役割を配置すると、3-4-3に収まる。今回はプロダクトマネージャーの周りにいるプレイヤーについて簡単に解説する。(外資のIT系がどんな人々で成り立っているかも合わせて参考にしていただきたい)

まずはわかりやすい前線から。いわゆる営業とSEがココ。ディールをクローズするのに直接関わる人達。アカウント営業とは特定の顧客にダイレクトに営業をしかける人。チャネル営業は代理店経由で数字を上げる人。そしてSEはその技術力を使って、プレゼン、デモ、ベンチマークテストと多彩に攻撃を作り顧客を落とす。ポイントは彼らは頻繁にポジションチェンジを行い、ゴールへの形(クローズへのシナリオ)を決定付ける。上図ではSEが中盤の司令塔となっているが、局面では営業が司令塔になり、SEが前線に立つこともある。

ディフェンスライン(= ポストセールス)にはいわゆるサポート部隊、QAテスト、キーパーに開発部隊を置いた。考え方としては、彼らはゴールを上げるシーンで直接顔を出すことはあまりない。むしろ攻めこまれた時(顧客に問題が起こりセールスから遠ざかる時)にむしろ目立つ人々。ことエスカレーションと呼ばれる人々(以前自分も担当した)は、守りの要となる。QAチームや開発そしてプロダクトマネージャーをうまく使って「組織的に」失点(=ディールのロスト、顧客の信頼低下)から守っていく。もちろん、後方での球際の強さ(技術力)、1対1の対人プレー(顧客が怒ってけしかけてくる)の場面でも強くないと、相対したときに相手の攻撃(言い分、怒号?)をかわせないし、カウンター(信頼回復からの次のビジネスチャンス)の起点となれない。

そして中盤である。

まずはプロダクトマーケティングが右サイド、左サイドは”Variable(可変)”、テクニカルマーケが中盤の底上がり目、プロダクトマネージャーはボランチ、とした。この左サイドには訳がある。そのディールの性質によって、ある時はアライアンス部隊、またある時はもう一人プロダクトマネージャー(例えばハードウェアや特定のチップ担当などSubject Matter Expertと呼ばれる人)、またはコーポレートSEと呼ばれる、顧客に大掛かりなデモを見せたりする人を配置するためだ。よってかなり左サイドで技巧的なプレーが要求される。

プロダクトマーケティングは基本的に会社の外に各種のメッセージを発したり、ブランディング、イベント周りを担当するということで、サッカーで言うところのサイドアタッカーの色が強い。

同じマーケでもテクニカルマーケティング(これも先日まで自分が担当した)はまた異なる。前線のマークが厳しい(顧客が素直に話を聞かない、競合からのプレッシャーがきつい)時に攻撃参加し、ゴールのチャンスメークを手伝う。よって、局面を打開するための高い技術力が求められると同時に、マーケターとしてのパスセンス(他のポジションへのコミュニケーション能力)も要求される。時に自らミドルシュートを狙い、マークを引き寄せ前線を楽にすることも行う。

さて、こうした各種のプレイヤーがいる中でプロダクトマネージャーは一体どんな役割を担うのか? 次回へ続く。

いざJob Change! 勝負を決める最初の100日の過ごし方

転職といえば、ダーマの神殿 (w

自分が小学生のころドラクエ3が爆発的に流行ったこともあり、ある仕事(戦士とか武闘家とか魔法使いとか)に精通した人が、別の仕事に変わる「転職」という概念があることを、このゲームを通じてなんとなく当時知っていた。今から思えば、複数の専門性の相乗効果を狙うというスタイルに、どこか憧れを抱いていた気がする。
(ドラクエ的に言えば、コテコテの戦士なのになぜか魔法まで使いこなせてしまうというような)

ただ、簡単な話ではない。キャラの強さがレベル30までいっていても、いったん転職するとレベル1に下がってしまうのだ。まさに最初からやり直しである。当時プレーしていて転職を実行すべきか否か、小学生ながらまるで大人のように悩んだ記憶がある(笑

そして、決断したらもう後戻りできない。

今自分がITの世界でプロフェッショナルとして働く中で、何度かこの「転職」を経験してきた。1時的にレベルダウンすることを覚悟の上である。後戻りできない緊張感と戦いながら、今度はそこからどうやってスムーズにレベルを上げていくかが次に大事なのだ。

これまでの経験や学んだことからいって、5つポイントがある。しかも、これらのポイントを実行するのにはスタートダッシュが必要。新しいポジションに移ってからの最初の100日が勝負だ。



1. Network, network, network

所変われば品変わり、おのずと人も変わってくる。まずは自分の上下左右にどんな人がいて、どういう力関係になっているのかをよく把握すべし。ポイントは、同一部署内だけではなく、部署外、事業部内外、社外と、水の波紋が広がっていくようにその環を広げて俯瞰すること。そして、自分が仕事をするにあたって大事な人々とネットワークをどんどん構築していくこと。



2. Deliver a quick win

日系企業の場合、えてして「まーゆっくり勉強してきなさい」という雰囲気があったりするが、こと外資に限ってそれは命取り。まずは自分が移ってきたということに対し、これだけのバリューがあるぞ、というのをきっちり見せつけるべき。「おお、なんかすげー奴が来た」と思わせないといけないのです。でも、あまりに大きな目標を最初に掲げる必要はない。ポイントは、小さいアウトプットでもいいのでチームへの貢献度が高いようなタスクを、できるだけ早く達成すること。



3. Under promise, over deliver

2と関連しているが、最初なのでいきなり大風呂敷を広げる必要はない。むしろ「能ある鷹は爪を隠す」的に、ゴールはそこそこに設定し、やってみたら120%くらいできちゃいましたくらいのほうが印象強い。



4. Set a personal 100-day goal, separate from whatever your manager expects

外資の場合、あなたがこのチームに入ってきたらこれを達成してほしい、ということを上司から明確に定義される。これは当然こなすとして、それ以外に自分個人として達成すべき目標を自分の中に立てるのだ。例えば、自分に直接担当しないプロジェクトでも、勉強するいい機会になると思えるものであればそこに顔出して、どう貢献できるか探ってみるとか、自分のチームでうまく機能していないプロセスがあれば、改善提案をしてみるとか。



5. Celebrate other poeple’s success

最初の100日間に、チームの誰かが素晴らしいアウトプットを出したとしても、それを見て焦る必要なない。むしろなぜ彼はそんなアウトプットが出せたのか冷静に分析してみること。そしてその人に対してはちゃんと「おめでとう」と言ってあげよう。



これから転職する人、異動した人、新しい仕事を初めて日が浅い人、リスクをとってチャレンジするからにはぜひ結果に結びつけましょう!今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。


やり遂げるべき時、見切りをつけるべき時

先日までラスベガスに滞在していた。ギャンブル目的ではなく、Interop 2012という世界のIT業界の中でもトップ3に入る巨大な展示会だ。開催4日間ののべ訪問者数は例年2-3万に達する。そこにJuniperも出展、さらにはQfabricのLive Demoをするということで、その部分自分が担当することになっていた。

プロである以上、そのアウトプットにはこだわって当然だ。しかし、状況によっては途中で見切りを付けないといけない時もあるし、逆にどんなに厳しくてもやり遂げなければならない時がある。その、後者にあたる状況に今回ラスベガスで自分は身を置くことになった。ちょっとしたドラマな体験だったので、本日は日記風に。

ベガスへ搬送する前、自分のオフィスで事前に試した時は当然うまくいっていた。社内でのPreshowデモもうまくいき、意気揚々と現地入り。ブースでセットアップを始めた。すると、アメリカという場所柄、いろいろなものが足りなかったり、短かかったりと問題が現れ始める。事前に梱包をお願いした人の詰めが甘く、いろいろ期待してたものが入ってない。

まーでもUSなんてそんなもんで、全てが期待通りに行くなどという幻想は最初から持たないほうがいい。むしろ直面する課題にたいして、いちいちがっかりせずに、どれだけ機敏に次の策を考えだして速攻で打てるかが重要となる。もしくは事前に自己防衛する手段を確保しておくか。(結局自分がハンドキャリーしていったものが活躍し、大きな問題とはならず。)

左のラックが自分の担当

その後デモで動かすネットワークやアプリ周りをたちあげていく。ところが、ここでも “If it can happen, it will happen.” まさにマーフィーの法則・・ ということで、途中で躓いてしまう。(ちなみにQfabric自身が問題を起こしたわけではないので誤解のないよう。結論から言えば、そこにつながってるHypervisorの方でした)

ここからが戦いだった。1時間・2時間と時間が過ぎていく。気がつけば時計は23時を周り、明日から始まる本番が刻一刻と迫ってくる。(朝にはうちの上層部が下見に訪れて、自分がデモを仕切り、なおかつビデオ録画まですることになっていた。)共にセットアップを手伝ってくれている同僚にも疲れが見え始め、ネガティブな発言が出始める。

見切りをつけるのか、やり遂げるのか

昨年Qfabricをリリースして以来、初めて公衆の面前でLiveで動かすということをBUで決め、内からも、外からもその期待は非常に大きい。おそらくこれだけモノを持ち込んどいてデモできませんなどといったら、そのマイナスのインパクトは計り知れない。

ここで、諦めるわけにはいかない。

すると、一旦休憩している時に何気なくチェックしていたRSSに、思わず目が覚める記事が載っていた。

This Inspiring Note Greets Apple’s New Hires on Their First Day

自分はアップル社員ではないが、このAppleが新しく入ってくる社員に配るというレターを読んだ時、鳥肌がたった。以下は特に自分が気に入った一節。

The kind of work that has your fingerprints all over it.
( あなたの指紋がそこかしこに残るような仕事)

The kind of work that you’d never compromise on.
(あなたが決してあきらめなかった仕事)

People don’t come here to play it safe.
(リスクを取らず、そこそこの仕事をするのではない)

They come here to swim in the deep end.
(果てしないその先へ挑むために、ここにやってきた) 

これを読んだ同僚たちもモチベーションが上がる。世界が待っているのに、期待は裏切れない。フレッシュなアイデアが出始め、途中うちのプロダクトマネージャーも合流したりと、最後のスパートをかける。そして午前2時ごろ、ようやく全てが期待通り稼働し始めた。

午前3時ごろ同僚とあげた祝杯は、きっと一生記憶に残るだろう。

そして迎えたInterop2012開幕。Live Qfabricをひと目見ようと数多くの人々が訪れてくれたことは本当に印象深いものだった。

終わってみればだが、こうした追い込まれ状態でブレイクスルーを見出す瞬間は本当に楽しい。もう打つ手がないと自分で決め付けるのか、まだ手はあると自分で決め付けるのか、その差は果てしなく大きい。そんなことをあらためて実感したベガス滞在でした。