IPOはイノベーションを阻害してしまう・・・のか?

LightBulb

刺激的なテクノロジーを見た時は「おぉぉぉ!これすごっ」という驚きがある。最近知ったLeap Motionなんかまさにその類のものだ。

他にもサンフランシスコのEV車スタートアップ Lit Motors (http://litmotors.com/) なんかも面白そう。

横からガツーンと当たられてもバイクとは違って倒れない!

先月シリコンバレーではStanford大の*Shai Bernstein氏による論文が物議を醸しだした。論文のタイトルは”Does Going Public Affect Innovation? (IPOはイノベーションを阻害するのか?)”というもの。Leap Motionのような、とがった製品とテクノロジーを持つ会社が今後IPOしたとすればそれはそれですばらしいことだし、はたから見ている側としては次のエキサイティングなプロダクトを見てみたいと期待してしまう。しかしShai氏はIPOすることによって、莫大な資金を得た会社がこれまで以上にInnovativeになるどころか、逆にそうでなくなってしまうのではと問いかけている。

このシリコンバレー企業の自己否定とも取られかねないShai氏の論文は読んでみるととても興味深い。事実自分がスタートアップの会社から、買収された会社に移った経験と照らしあわせてみても、確かにそうだなと思えるところがある。以下3つポイントを挙げてみた。

1. 市場からのプレッシャー

IPO前と後で全く変わること、 それは公開企業となることによって常に4半期の数字に追われ、また成長を求められる。会社はマーケットに対して4半期およびその年のパフォーマンスの予測を公開を要求し、下方修正しようものならきっちり説明しないとその株は売り浴びせられる。IPO前まではその会社のコア・テクノロジーを開発し研ぎ澄ます、ピュアなイノベーションに集中できるが、公開した瞬間から「次の4半期の数字を達成するために必要なこと」というのが急に会社としてのプライオリティーになってくる。よって長期的なイノベーションで差別化を・・と考えていてもそうしたプロジェクトを続けることは難しくなるケースが多い。(よほど内部留保が潤沢でない限り)

2. イノベーションを買うようになる

IPOするとき、その会社のテクノロジーは「ピーク」にある時となる。IPO後もイノベーションの「質」を確保し、4半期の数字を達成しつつ、ピークから落ちたとマーケットから思われないためには、イノベーションを「買う」というのが手っ取り早い。一方、ビジネスの成長スピードが早すぎるのも問題。要求に答えられるだけの人員も揃っておらず、組織もIPO前の状態だと、折角のチャンスを逃すことになる。「買う」ことは最短のイノベーションだが、それを受け止める土台なくして買う意味はない。IPOするまでのトップは刺激的なビジョンと社員を束ねるカリスマ性やリーダシップが特に求められる。IPO後はビジネスの成長と組織の成熟をバランスよく舵取りするために、ある程度ビジネスオペレーション経験が豊富なトップが招集されるのはこうした理由がある。

3. High liquidity of professional

シリコンバレーではIPOさせるまでが楽しいと考える人は多い。なのでIPOしたらそれがゴールなのだ。そしてキャッシュが手に入り次第辞めてしまう。たいていは別のスタートアップに行くが、一時リタイヤなど行く先は様々。問題は残された人達。IPO前のCTOが公開後にいなくなってしまうと、次のCTOが来るまでどうテクノロジーを進化させていくか全く不透明になってしまう。上の問題だけではない。えてしてIPO前の会社はノウハウや技術スキルが「属人的」なため、現場であっても「その人」が辞めたら周りがしばらく機能不全になることはよくある話。そんな状態でIPO前と同じレベルのイノベーションは期待できない。

従って、IPOする前の会社と、した後の会社は基本的に別会社になる、と考えたほうがいい。Shai氏が言いたかったことは、IPO前後でイノベーションが阻害されるのではなく、その「質」が変わってしまうということなのだ。IPOできなくても「買われる」ということが起こる以上、スタートアップは常にどこよりも尖っていないといけないから、必死に技術開発する。一方イノベーションを「買う」側は、尖ったテクノロジーを自社に取り込んで、より差別化を狙える。(うまくいくかどうかは別として。)

シリコンバレー企業の生態系は、投資する者、IPOする者、イノベーションを買う者、買われる者、といった要素で成り立っているのだ。この地の企業動向を追うとき、こうした生態系を意識しながらニュースや企業のアナウンスを読むと、トレンドがもっとよく見えてくる。

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*実際の論文に興味のある方はこちら。
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2061441

また、この論文についてShai Bernstein氏へのインタビューもあるので、あわせてどうぞ。
論文の要旨がわかります。
http://www.bizjournals.com/sanjose/news/2013/01/22/ipos-make-companies-less-innovative.html?ana=RSS&page=all

シリコンバレーの2013年を象徴する(かもしれない)1本の木

startup

2013年にIPOしそうな19社のリストを見ていたらなんとなくエコシステム的なものを感じたので、インフラー>アプリ->Mobile系と絵にしてみたらきれいに収まってしまった。真ん中に鎮座する仏さまはZendeskのもの(笑)

Source: http://www.bizjournals.com/sanjose/blog/2013/01/bay-area-ipos-to-watch-for-in-2013.html

 

IPO-tech-ecosystem

ソーシャル系
Twitter, Eventbrite

Online Game系
Kabam

Mobile ・・・
Payment: Square, XOOM
Advertisement: Marin Software

クラウド・ストレージ系
Box.net, Dropbox

Enterpriseアプリ
Palantir Technologies, Marketo, Survey Monkey, SugarCRM, Zendesk

Big Data系
Cloudera

GreenTech系
iWatt

インフラ系
Arista Networks, Violin Memory, Nimble Storage, Gigamon

これを見てると今のシリコンバレーでどのエリアがホットか一目瞭然。

Facebook IPO 狂想曲

FacebookがいよいよIPOを今週中に行うと言われている。実際いろいろなトレーディングサイトを見ていると、”Expected Pricing Week of:05/14/2012″となっており、おそらくかなり高い確率で起こるだろう。当初流通する株式は3.3億株だそうだが、果たして株価はどうなることやら。

巷ではFBの共同創業者の一人(もともとブラジル人、すでにFBは退社しているが株式は保有)が取得したUS国籍を捨ててシンガポールへ移住、莫大な税逃れを密かに企む。(表向きアジア地域への投資活動に従事するとコメントしているが・・)

Facebook Co-Founder May Gain Choosing Singapore Over U.S. – Bloomberg

ちなみに、アメリカ市民権を持ってる人(グリーンカードを持ってるだけではダメ)、各証券会社との取引高や、FB株を取り扱い可能なオンライントレーディングサイトでの取引が一定金額以上(だいたい5000万円以上)あれば、IPO時のFacebookの株式購入の優先権が得られるようです。

さて、FBお膝元の、パロアルト、メンローパークをはじめ、シリコンバレーエリアでは不動産価格の高騰がすでに始まっていた。当然、FB長者を狙っての話だ。 

Facebook IPO is juicing Silicon Valley real estate prices to crazy levels | VentureBeat

地元のローカル紙も土日ともなれば下のように豪邸達がページを飾り、Open houseと称して現地見学会を盛んに開く。

ちなみに、左ページの物件がおよそ5億円、右上部のプール付き物件が4億円。物件によっては無料でランチが振舞われたり、出張カフェスタンド(これも無料)、子供向けにバルーンアートの出張サービスがあったりと、どこもディール取るのにかなり金かけてます。ちなみに、このテの家に手を出すと、固定資産税だけで毎年BMW 7シリーズが1台買えるくらいの金額になる。しかも日本と違って、年々下がっていくわけではない。ましてやプール付きなんて買った日には、その維持管理コストだけで・・ まー実際そんな「些細なこと」など気にならないほどの人々が買うわけで、この地のビリオネイヤーは次元が違うわけです。

もしこの地に足を踏み入れることがあれば、こうしたビリオネイヤー達が実際どんな家に住むのか、話のネタに社会科見学としてみるのも面白いかもしれない。ローカル紙(例えばPalo Alto Daily)のような無料新聞にたくさん載ってます。

ただ少し引いてみてみると、この地では真剣に夢を見てそれを実現させてやろうと考えている人々がたくさんいる。いるだけではなくて、それを支える人々も場所もコミュニティーも種類も豊富だし、粒ぞろいなのだ。しかも、実際に夢を叶えた人、力及ばず叶えられなかった人双方から薫陶を受けるチャンスも多い。成功しても失敗してもそこはシリコンバレー、うまく行った人はまた次のチャレンジをするし、失敗した人もそれを踏まえて再チャレンジをする。その姿勢になんの後ろめたさがないのだ。FBのIPOはある種「飛び値」に相当する現象だが、これに乗じてIPOをするというスタートアップは多いと予測されている。腕に自身があり、テクノロジーの世界で徹底的に上を目指してみたい人は、ぜひ1度この地でチャレンジをしてみることをおすすめします。