7年目のベイエリアでの年越し

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2012年12月でUSに移ってきてから早いもので7年目に突入となった。これまで多くの人に支えていただいたことに改めて感謝すると共に、2013年もまた新たな挑戦へ向けて気持ちが高ぶりつつある。

さて、本年最後の締めくくりは、娘の通う小学校が同じというのがきっかけで仲良くさせていただいている友人宅での年越しそばイベント。なんと、実際に日本のそば粉、そば打ち道具一式を空輸でとりそろえ、そばを作るところから始まる本格年越しそば。そば打ち名人の異名を持つスゴ腕ソフトウェアエンジニアO氏の恒例パフォーマンスだ。

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そば粉は越前は末吉製粉から取り寄せた確かなもの。ざるそば、鴨南そば、とろろ、大根おろし等々で食べつくし、日本そばのおいしさを十分に堪能させていただいた。

こうした光るエンジニアの人々は概ね良い意味でのコダワリが強く、下準備、道具、工程、とプロ並のステップを踏む。そこには2つ背景があり、「常に学ぶ」という習慣が染み付いており、どうすればうまくいくかに対する興味の追求は半端ない。もっともそれが自然な行動となって現れるので「勉強」という意識はゼロ。生半可な知識でうかつにも挑もうものなら、おそらくあなたは自分の不勉強さを嘆くことになる。もう一つは誰かに見せつけたり自慢したり、という類のものではなく、こうしたコダワリは純粋な自己表現の中に位置づけられている。楽しいからやる。自分のしたいことを、したいようにする。ただそれだけ。

何かをするのに「やらされている感」が最小、「やりたい感」が最大だからこそ、集中力が高く効率良くラーニングカーブをたどる。そのプロセスが常に人生の楽しみなのだ。

こうした「ハイパーフォーマーな自然体プロフェッショナル」が多いことはシリコンバレーの特徴だ。(日本人に限らず)もしこうしたスタイルを志向してみたいのであれば、ぜひ新年をきっかけに検討してみてください。

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今年1年ブログをお読みいただいた皆様ありがとうございました。2013年もマイペースで続けていきますので。引き続きよろしくお願いします。

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「プロダクト」を通して世界を見る、プロダクトマネージャーという仕事

“London Eye”
もうすぐ日本で公開される映画007 スカイフォール。
予算の関係で海外ロケが減り、ロンドンのシーン多しとの話も。

今回から数回にわたって、日本ではあまりメジャーではないプロダクトマネージャーと呼ばれる仕事について書いてみたい。聞いたことはあっても実際どうなの?という声にお答えしようと思う。

技術系ガジェットからキッチン雑貨に至るまで、自分は「プロダクト」を見て触って使ってみたりしないと気が済まない性分である。中でも「プロ仕様」という言葉を聞くと無性にワクワクする。例えば007で使われる細工の効いた小物とかボンドカーには、いつもストーリとは別に見てて期待してしまうのだ。そこには、至高のプロダクトを扱うことが許され、卓越した技を極めたもののみが扱えるという、何か憧れを感じるのが背景にある。使い手のテンションを高め、作り手のビジョンと共鳴するとき、きっとそのプロダクトが最も価値を出すのに成功した瞬間なのだろう。

先日1周忌を迎えたスティーブ・ジョブズは、まさにその瞬間を作るのが抜群に上手だった。シリコンバレーでは単にアップルのCEOというだけではなく、この地のプロダクトマネジメントの究極の体現者として伝説の存在となっている。新しいバージョンのiphone/ipadを初めて手にするたびに人々が驚き、夢中になった表情を見ればもはや言葉を尽くす必要もない。

ここで思い出して欲しい。以前このブログでも取り上げた「シリコンバレーで働きたいと考えるあなたに、見ておいて欲しい1枚の絵。」の記事だ。そこで下記のような絵を載せた。この、左下アップルの絵に着目。

ジョブズが真ん中にいて、全てが彼中心に周っているかのようなこの図。それこそLondon EyeのようなHub and Spoke が描かれている。実はこのモデルこそプロダクトマネジメントの究極の姿ともいえる。

なぜか?下の図*1を見ていただきたい。

先日UC BerkeleyでMBAプログラムを展開する、Haas Business School主催のプロダクトマネージャー向けトレーニングに参加した際語られていた一コマ。プロダクトマネージャーは会社のすべての機能部隊とつながり、プロダクトの発案から開発・テスト、価格付け、販売からサポートまで全てのフェーズで意見を求められ、そこでの決断が製品の運命を決めてしまう。一緒に働いてくれる各部門の人々に、「この人が作ろうとするプロダクトは面白い。一緒にやってもいい。」と常々思わせるようでないと、リリースまでおぼつかない。途中で「これはダメだ・・」と思われた瞬間に、もはやそのプロダクトの魅力は半分以下になる。また、方向性をめぐってケンカのような議論になることもある。ただ、このハブとスポークの緊張関係こそ、プロダクトマネージャーの大変さであり醍醐味とも言える。

従ってシリコンバレーから生み出される製品はプロダクトマネージャー達の血と汗と涙の結晶なのだ。

通常は製品群ごとに担当PMがつくが、スティーブ・ジョブズは自らの振る舞いがすでにプロダクトマネージャーであり、そこから逆算で組織化してしまった。CEOもしくはCTOとプロダクトマネージャーが兼任することはこの地のスタートアップではよくあることだが、アップルほどの規模でそれを実現してしまうところが彼を究極の存在にせしめた。製品のビジョンを各担当チームにしっかり植えつけ、常に高いレベルで緊張関係をリリースまで保つことは、口で言うほど簡単ではない。

またある程度の規模の組織になるどトップダウンでの製品開発は、時として危険になる。もしトップが「XYZという技術が向こう3-5年で流行りそうだから、うちもそれを取り入れたものをを作らねば」と言い出したとする。結果、XYZを取り込むのが目的となってしまい、本来プロダクトとして果たすべき役割から逸脱しやすくなる。

プロダクトマネージャーはそういった声に耳を傾けても、常に一歩引いて本当に必要なのは何か、考えなければならない。

(続く)

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*1)  UC Berkeley Executive Education, Product Managment programから許可を得て抜粋 プログラム詳細はリンクを参照。 http://executive.berkeley.edu/programs/product-management

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進化論2.0

Ballet San Joseで活躍する純奈さん

強いことは生き残ることと必ずしもイコールではない。必要条件であったとしても、生き残るための十分条件ではない。それはここ最近のシャープの没落、サムソンの敗訴を見ててもつとに感じる。もちろんいかにして「強く」なるかということも大事なのだが、同時に「強い」ことを成り立たせる前提条件は、実は自分が想像する以上に早いスピードで変わっていることも忘れてはいけない。そして気づくのが遅れると取り返しの付かない痛みを伴う。

“It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is the most adaptable to change.”

およそ140年前、ダーウィンが「種の起源」で伝えたことは今なお普遍の真理なのだろう。

先日娘がバレエを習っているのが縁で、サンノゼバレーでプロフェッショナルダンサーとして活躍する純奈さんに話を伺うことができた。http://www.balletsj.org/company/ige.html

彼女の話を聞いて、これは進化論2.0だとでもいいたくなるくらいの衝動にかられ、ブログにすることに決めた。

純菜さんは5歳からバレーを始めた。最初は横浜にあるバレエ教室に通い、そこでの恩師との出会いが彼女の運命を後押する。彼女はとてもストイックだ。ここにそれを表すエピソードがある。朝早くに学校に行き、放課後はバレエ教室に毎日通った。リサイタルが近づこうものなら夜11時くらいまで練習するのはザラ。これが中高の5年間続いた。従って家族とまともに顔をあわせるのは週末だけ。父親と顔をあわせれば第一声は「ひさしぶり」という有様だ。とにかくバレエを踊るのが好きでたまらない、幼い頃から国立劇場でプロフェッショナルバレー団の中で、子役としても活躍してきた。
こうした生活が当たり前だった彼女は、勉強を含めて労を惜しまなかった。

そしてゆるぎない信念を基に築きあげた強さは、高校3年生の時にドイツ・バレエ学校への留学の道を切り開く。

ここでなぜドイツ?と思う方もいるだろうから補足。ドイツは欧州一の経済力を背景に芸術文化への投資を惜しまない。バレエはPerforming Artと呼ばれ、れっきとした国からの補助対象なのだ。よってその施設は非常に充実しており、バレエの本場欧州への足がかりとしては申し分ないステップといえた。

留学先のハンブルグではまるで天国のように感じたという。なぜなら日本では学校とバレエを両立せざるを得なかったが、そこでは1日の全てがバレエ中心にスケジュールされていたからだ。無論語学や芸術といった学術分野もあるものの、自分が望んだことを高いレベルで鍛錬する日々にこれ以上ない充実感を感じていた。

そして18歳の時最大の試練が訪れた。プロフェッショナルダンサーとしてのデビューである。

基本的にバレエダンサーはダンスカンパニーという会社に入社し、ダンサーとして働いて給料をもらう。カンパニーによっては労働組合もあるし、健康保険のサポート等福利厚生だってある。従って、いかにこの「カンパニー」に「就職」するかが勝負なのだ。

これまでストイックに自分を高めてきた純奈さんだが、ここで厳しい現実と向き合うことになる。欧米のダンサーは背が高く、体躯も大柄。日本人ダンサーがこうした中で並ぶとカンパニー的には「浮いて」見えてしまうのだ。ダンサーとして小柄な純奈さんは、技量とは別次元の戦いに苦戦した。

受けて、受けて、受けまくったが、落ち続けた。技量では負けていないのに、である。

この時日本に一時帰国し日本でバレーの先生として働くかたわら、スタバでもアルバイトをしてこれから先どうしようか考えていたという。

たが、あるとき恩師にこんなことを言われた。

「いつ、(海外に)戻るの?」

行く先を見失っていた純奈さんに、こうして「変化」の時が訪れた。そして、彼女はその瞬間を見失なわかった。

「欧州を主戦場にするのではなく、もっとリベラルなアメリカ、カナダ、オーストラリア方面で試してみよう。」

そう考えた彼女は早かった。もはやためらいはない。
戦場を北米に見定めた彼女は、見事サンノゼバレエに採用され、今年ソリストとしての地位を射止めたのだった。

こうした紆余曲折を経て、プロフェッショナルダンサーとして見事開花した純奈さん。その姿は、強く美しい。そしてその強さと美しさの両立は並大抵の努力で到達できるものではない。ましてや場所が海外となると競争は熾烈さを増し容赦がない。
しかし純奈さんは変化を厭わなかった。だからこそ成し遂げられたのだろう。

ダンサーとして舞台の上で踊る彼女は、ものすごく大きな存在に見える。堂に入っているとはまさにこのことだ。

もしシリコンバレーエリアに来られる際には、ぜひ見ていただきたい。舞台の上で華麗に踊る彼女の美しい勇姿を。

もしダーウィンが今に生きていたら、こう修正するかもしれない。

“…. It is the one that is the most adaptable to change, rather commit to change.

変化に「順応する」というのでは受動的すぎる。むしろ能動的に変化することを自分に「コミット」する。自分の持てるリソースがそこに集中したとき、本当のブレークスルーが生まれるのだ。

純奈さんの今後の益々のご活躍を祈っています。

 

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純名さんに直接インタビューした記事もあります。合わせて御覧ください。
http://svpl.wordpress.com/2013/06/13/junnaige/

 

 

Executive Briefingでおさえるべき5つのポイント

今週はボストン郊外のWestfordに来ている。ここでQFabricサイド代表ということでEBCに参加する必要があったためだ。
EBCとは”Executive Briefing Center”の略で、ここで顧客サイドのDecision Maker, Influencerを呼んでダイレクトに対話を持つ場である。内容は新製品の紹介だったり、デモだったり、ポストセールス系だったり、製品開発チームとグローバルな顧客が直接顔を合わせることができる貴重な機会なのだ。相手はエライ系の肩書きを持つ人々が来るのでかなり真剣勝負。ここでコケればビジネスを失うし、きちんと相手の心をつかめば逆にチャンスは広がる。ということでこのEBCという機会は自分の能力が試される良い機会でもある。

これまでEBCを行ってきたなかでいつも大切にしているポイントがあり、これまでのところ効果ありなので書いてみたい。

1.  「製品だけ」を語らない
いきなり逆説的だが、単に製品そのものをアピールするだけでは、おおむね自分の伝わって欲しいという分量の半分くらいしか相手は受け取ってくれない。特にスタートアップ系の製品やQFabricのように新しいコンセプトの商品の場合、それを語ることがついつい楽しくなってしまって、話し手がその自慢ばかりをしたがる。(はい。自分がそうでした・・)

でもそれではダメ。メッセージがベンダーサイドから一方的なのだ。顧客はそれぞれに悩みを抱えている。そしてその悩みが当該の製品を使うことでどう解決されていくのか、その際の経済性はいかなるものかが気になっているのだ。なので自分はいつも担当営業チームに顧客の悩みがどこにあるのかを事前に聞くし、当日も相手に直接聞く。その悩みのレベルは単に「情報集め」という浅いものから、「近々で解決しないと・・」という切実なものまでさまざま。でもそれを知ってるのと知らないとで話を進めるのでは、メッセージの受け入れ具合にかなり差がでる。

2. 得られる「体験」を語る
これは消費者向けの製品やサービスに対してよく言われることでもあるが、実は法人向けにだって当てはまると思う。その製品を使うことで普段の顧客のビジネス、オペレーションのどこが、どう変わって、「悩み」が解決されるのか、この辺が具体的であればあるほどいい。もちろん数字を使って話せればなおよし。そのためには顧客サイドの「現場」がどういうことをしているのか、よく聞いてみること。

3. 相手の「行動」を良く見る
特にDecision makerの場合、そのEBCだけでディールが決まる可能性もあるのでついついアグレッシブにいってしまうケースがある。しかしたいていこれは逆効果。むしろ、相手がどのような購買スタイルなのかをよく見極めること。例えば自分が以前通ったStanford大のクラスでは、意思決定を左右する要素としてリスクをどう見るか、ということについて分析手法を教えてくれる(これについてはまた別途) 一言で言えば リスクに対して3種類の態度に大別できる。

Risk Averse (慎重),
Risk Neutral (大きいリスクはとらないけど、かといって、リスクをとらないわけでもない)
Risk Tolerant (ギャンブルしてもいい)

の3つ。

話の中で相手がどの系統なのか見極めること。そうすればおのずと自分が語るべきメッセージの「トーン」が調整できるはず。
「これを言ったら相手は引くな」とか、逆に「これを言ったら相手はノってくるかもな」とか。

4. Stay calm (落ち着いて)

相手が自分よりも立場が上だったり、なんかあんまり反応が薄かったり、はたしてちゃんと自分の言ってることは伝わってるんだろうかとだんだん心配になってくることもあると思う。でも、えてしてそれは考えすぎで、上記1・2・3がしっかりできていれば大丈夫。むしろあせらず落ち着いて語っていくこと。

5. Small Talkを大事にする
日本でもそうだが、USでも会議の合間や休憩時間に雑談(small talk)がはさまる。EBCの場で交わされる雑談はおおむね以下5つ。

業界の話
前日のスポーツ(NBA, MLB, NFL, NHL)の話
新商品(ipad3みたいな)の話
相手が住んでいるエリア、およびそれに付随するローカルネタ(目玉スポット、リゾート等)
家族の話

無論わからないものはわからないので、話できるところだけ絡めばいいと思うが、逆に家族ネタになったときはきちんと話すこと。
というか、おおいに自慢していいです。そこで相手の子どもと同年代とわかればしめたもの。子育ての経験を共有でき、リレーションを築くのにかなり効きます。