Deep Connected – “ウェアラブル”を飲み込むその次のキーワード?

前回の記事でGoogle Glassのことを取り上げた。サムソンがSmart Watchをリリースし2014年はウェアラブル元年になる、という声も聞こえる。しかし、本当に問いたいのはウェアラブルなデバイスがユーザーにとってのどんな問題や、「困った」を解決するのか?提供したいExperienceはユーザーが本当に共感できるものなのかということ。その焦点がぼやけたプロダクトは打ち上げ花火のように一瞬で消えていくだろう。

一方で少し目線を先に向けると”ポスト・ウェアラブル”がすでに見え隠れする。まずは下の動画を見てほしい。

 

MITメディアラボで研究されているこの”Dynamic Shape Display”と呼ばれるこのシロモノ。手の動きに連動して遠隔地にある直方体の柱が生きているかのように動き出す。気持ち悪い?それともいよいよ「画面越し」の時代が終わる時が来た? その評価はもう少し先になりそうだ。今はまだ積み木のような直方体だが、この「ピクセル」がもっと繊細になった時、一つ一つの直方体にセンサーが仕込まれ、硬い、冷たい、といった擬似感覚を再生できるようになった時、さらに先のウェアラブルなデバイスなんかと交わってくると、「遠くて近い」がもっとリアルなものになるのだろう。

写真・文字・動画の共有によるSNS全盛の時代は、自分達の生活や仕事に深く影響し始めた。そして、今後は「肌感覚」をも共有するDeep Connectedな世界へと向かうのか、ちょっと注目して見ておくのもおもしろい。

 

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AWSによる破壊的イノベーションが炸裂する!? Amazon.comとVMwareの対決に見るクラウド市場

Amazon-smile

“Amazon smile” それは勝ち方を心得た者の不敵な笑み?

つい数年前まで株価100ドル近くで推移していたVMwareが向こう3-5年は厳しい戦いになりそうな気配だ。1月末に決算発表とリストラのアナウンスを行ったタイミングで株価が急降下。52 week lowをつついてしまった。下の図は直近1年間の株価の動き。いかにその落ち込み方が急だったかが見て取れる。

VMW

EMCに買われNiciraを高額で買収した、業界では優良企業とされていたVMwareなのになぜ? それはVMwareのビジネスモデルがクラウド時代においてそぐわなくなりつつあるからだ。下記のCEOのコメントにもその危機感が現れていると思う。

“If Amazon Cloud wins, we all lose”
http://www.bizjournals.com/sanjose/news/2013/02/28/vmware-to-partners-if-amazon-cloud.html

簡単に要約すると、Amazon AWSが持ち前の柔軟性と、サービス展開と管理のしやすさ、圧倒的な価格優位性でパブリック・クラウド市場に旋風を巻き起こしている。VMwareはユーザーにソフトウェアを入手してもらい、ライセンス料を取る。そのライセンス料が非常に高額なので、自社でクラウド環境を構築、拡張となるとかなりの投資を覚悟しないといけない。ところがAmazon AWSのように、すでにクラウド環境が用意されていて自分のニーズに応じた使用料だけを払えばよいとなると、ユーザーの負担はかなり軽くなってくる。その価格差は構成によっては100倍以上にものぼる。よって、ユーザーからみたAWSの優位性がVMwareを凌駕しているのだ。

実際VMwareの決算書をみてみると、収益の半分はライセンス料。あとはサポート、教育といったサービス系。つまり完全にライセンスビジネス。

一方のアマゾン。目下株価が上昇気流にあり直近では275ドルを指す。売上高も6兆円を突破。まだその勢いは留まりそうにない。

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ただ、よくよく決算書を読むと、アマゾンにも「?」がないわけではない。

1)AWSの収益性

売上構成を見ると、まだ圧倒的に小売事業が柱となっておりAWSはサービスとして全体の3%ほど。現状薄利多売モデルで、ユーザーベースを広げようとしている最中なのか?

NetSales_breakdown

一方のVMwareもこと米系エンタープライズにおいてはかなりユーザーベースを獲得していて、特にUS Federal (日本でいう官公庁エリア)をがっちり抑えている。支出が大きいこのマーケットでメインプレイヤーであることはキャッシュ・フローという点で強い。

2) 膨らむ借金?それとも攻めの投資?

アマゾンは昨年約3000億円ほどキャッシュを増やすことに成功している。ところがなんと、同時に3000億円の借金も行なっている。B/S上は”Net property plant and equipment”のところに収まってるようにも見えるので、AWSに重点投資ということも想像できなくもない。2013-14のスパンでどういったサービスが展開されてくるのか非常に見ものだ。

VMwareだってまだ十分戦えるだけのリソースがある。特に、トップが危機感を内外に示したことは非常にいいと思う。自社のビジネスにあぐらをかき、あまたの危機のサインに目を向けず、気がつけばおとなりの国の企業から増資を仰ぐハメになったシャープの経営とは様相が異なる。

もっともVMwareも一方的にAmazonを敵対視するのではなくて、もう少し協力的なアプローチやOpenStack等との連携などの「外向け」な方向性を示したほうが今後のクラウド市場で残っていくためにも必要だったとも思う。なんといっても、ESXiと他のデバイスとの高い互換性、vSphere APIは十分にオープンな世界をつなぐポテンシャルがあるのだから。このままだと「高額な自社製品への囲い込みこそ正義」という部分だけが一人歩きしかねない。

さて、このVMwareだが来る3/13に、EMCと共同で”Pivotal Initiative structure and business”についての発表が行われる。どうやらBig DataとPaaSの部分でのコラボらしいのだが、これが果たしてAWSからの脅威を跳ね返せるだけのインパクトとなるのか、要注目だ。

ソニーにとってPS4は復活の先鋒なのか、それとも・・

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先日Playstation 4が発表になった。注目される機能として、ゲーム中のプレーを常時録画し、思わず自慢したくなるプレーや場面の直前数分間を切り取ってSNSに流すとか、Ustreamでの生中継、SNS経由でプレーヤー同士で助け合うなど、ソーシャル色満載。またスマホ・タブレット対応セカンドスクリーン、Sleepモードの導入など単なるハードウェアとしての性能向上以外にも話題になったものがある。

USでも小学校高学年くらいになってくると、学校が終わったらすぐに家に帰りXboxでネットワーク越しに友達とゲームの世界に入り、同じ場面を見ながら一緒にプレー。そして傍らでチャットしながら学校でのことを話したりするということがあったりする。そういう意味ではソーシャル色が強いPS4はそれなりに注目は集めるだろう。

ただ、この記事ではもっと別の角度からソニーについて書いてみたい。PS4発表の一週間前に現会計年度の第3四半期の決算書がちょうどあがっていた。何気なくみてみるとそこに驚愕の事実が記されていた。プロダクトマネジメントという観点から考えた時に正直ソニーはどういう戦略で資金と資産を使いたいのか?と思わず首をかしげたくなる数字がそこにはあった。

1. ソニー損保・生保でかろうじて食いつなぐキャッシュ

まずは負債の部。(29ページ参照)

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11.3兆円ほどの負債総額のうち、約7兆円が銀行と保険。誤解のないよう付け加えると、こうした金融ビジネスで顧客から預かったお金はB/S上は「負債」にのる。(企業にとってこの預り金は預金者という「貸方」からのお金。それを「借方」である企業が投資したり運転資金にしたりする。)言葉的に儲かってないような響きだが、そうではなくて、ソニーのビジネスは損保と生保で成り立ってる図式から抜け出す気配全くなしということ。ソニーの「プロダクト」収益はどこへいった?という意味です。

2. なんのため?膨大な株式・債券などへの投資額 (P28参照)

なによりも一番不可解なのはその7兆円の行き先。ソニーがメーカーとしての復活を望むのであればどこにその資金を回さないといけないのか?ソニーが出した答えは「株・債券投資(有価証券投資)」、、(と、決算書からは見て取れる)であった。

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総資産13兆円に対して、有価証券投資が占める割合は半分以上。メーカーとして何を作りたいんだろうか・・

3.  さらに意味がわからない膨大な日本国債投資

そして、そのお金の行く先がなんと日本国債なのであった・・ (P38)

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7兆円の有価証券投資額のうち、約6兆円くらいが日本国債行き。総資産の約半分が日本国債の会社って・・ その意図は低リスクで収益を狙っている・・?

当然国債なので、仮にアベノミクスがうまく効き始めてインフレ率が上がれば国債の価格は下がるわけで、ソニーのよって立つ資産価値がどんどん目減りする。今なお収益の柱を金融業に依存し、メーカーとしてソニーの魂が感じられるようなプロダクトが生み出せないのならこの先かなり苦しい。

冒頭のPS4だが、もしソニーが本当に”自由闊達にして愉快なる理想工場” を復活させたいのなら、そのシナリオがあってしかるべき。PS4も「ソーシャル機能を備えた高性能コンソールゲーム端末」で終わるのではなく、その復活シナリオの中でソニーが向こう5年、10年で作りたいエコシステムのなかでどうPS4を位置づけたいのかというメッセージを正直聞きたかった。GoogleはすでにGoogleメガネの先行予約を開始。彼らはビジョン実現に向けて着々と製品をプランし動いている。
(http://news.cnet.com/8301-17938_105-57570779-1/confirmed-google-glass-arrives-in-2013-and-under-$1500/)

プロダクトマネージャーは単にプロダクトを作っておしまいではない。会社全体のビジョンと戦略のなかで、どのようにそのプロダクトを位置づけるのか?そこを考えるのもプロダクトマネージャーの仕事である。PS4の発表と不思議な決算書を読んでいて製品ポートフォリオの観点がごっそり抜け落ちているように見えた。

ちなみに総資産額から言えば実はサムソンもソニーと同じくらいの規模(約12兆円。2012年実績)。だが、有価証券投資にまわしているのは1兆円に満たない。そして最後には純利益約2.4兆円を稼ぎだす。

もっとトップに噛み付くプロダクトマネージャーがソニーをかき回してほしい。過去の輝きが伝説で終わってしまう前に。