Healthy Conflict – それはグローバル市場を生き抜くためのコアスキル

Conflict

まずは下のリストを見てほしい。

  • Adobe Systems Inc.
  • Apple Inc.
  • Cisco Systems Inc.
  • Facebook Inc.
  • Google Inc.
  • Intel Corp.
  • Oracle America Inc.
  • Twitter Inc.
  • Hewlett-Packard
  • 他270社

よく見慣れたシリコンバレーの会社の名前が並んでるわけだが、この278社、なんのリストかというと、実は同性同士の婚姻に賛成している会社のリストである。なんともアメリカらしい。
http://www.bizjournals.com/sanjose/news/2013/02/27/apple-facebook-and-others-call.html

現在アメリカには同性婚を認めないという DOMA(Defense of Marriage Act)という連邦政府法案がある一方、州ごとには個別に認めたり認めなかったりという状況であった。よって、米軍や連邦政府(日本で言う霞ヶ関の省庁)など、国家公務員と俗に言われる仕事に同性愛者はこれまで従事することができなかった。(州レベルではOK)そこでオバマ政権は、政府として同性婚を正式に認めるという方向で最高裁と調整に入っている。
(http://www.foxnews.com/politics/2013/02/24/obama-considers-weighing-in-on-gay-marriage-case/)

上のリストはこうした動きに賛成するシリコンバレーの会社達だ。見ての通り一連の大御所達は皆賛成。これには表裏の理由がある。表向きは人材の確保に同性愛者かどうか、というのははっきり言って関係ないということ。能力があって結果を出せることがよっぽど大事。裏向きの理由はもし同性愛者を排除しないといけないとなると、採用の時のコンプライアンスの手間とコストがかなり上がってしまうという背景がある。

アメリカの中でも西海岸、ことシリコンバレーエリアの会社は上記のような性差、人種や信条に対する扱いに差異が少ないほうだ。無論、インド人が大勢を占める部署に日本人が一人ぽつんといるような状況にいたとしたら、自ずと差別までは行かなくとも差異は感じるかもしれない。しかし会社全体として見た時、このエリアの会社では「人種」を理由に不当な扱いを受けるケースは少ない。
(ゼロとは言いません。また人種というよりビザのステータスによる差異はあると思う。)

日本からすれば「別世界の話」とでも聞こえてしまいそうな話だが、実はシリコンバレーの企業たちがグローバルに競争力を示す重要な示唆を含んでいるのだ。

それは、”Healthy conflict” という考え方。

日本語でいうと「健全な対立」とでもなるだろうか。これだけ多種多様なバックグラウンドを持つ人間が集まれば、当然話し合いは一筋縄には決まらない。重要な意思決定局面ともなると、お互いが己の立場を完璧なロジックで論理武装し、ぶつけ合いを行う。なぜならそこから創造的な答えやアイデアが初めて生まれると考えているから。シリコンバレーの会社は、こうしたHealthy Conflictを非常に大切にする。また先日のスタバの投稿にも書いたとおり、議論の前提となる情報はお互いフェアに公開。万が一隠しておいて、自分を有利にしようとあとから出せば、「それはフェアではない」となって隠した側が非難される。

さらに、自分が所属するJuniper Networks US本社の場合、”Dealing with conflict”というトレーニングを4半期に一度行なっていて、社員なら誰でも受けられるようになっている。自分も受けた人の一人。その中身については別の回に譲るとして、原則マネージャーがその参加を制限することはできない。(仕事上のコミットメントがあれば当然別だが。)

よく日本のメディア等でさかんに「情報公開」を求めるコメンテイターや学者の人々がいるが、実は情報公開はイノベーションや健全な議論の必要条件ではあっても、十分条件ではありえない。情報がオープンになるだけでは何も産み出さないのだ。その情報をもとに議論する側に、「”healthy conflict”とは何か」という理解やスキルがあること、そして、健全な対立、権威に対する健全な挑戦が受け入れるルールを作り出して初めて意味を成す。そこを勘違いしてはいけない。

全社ミーティングに見るグローバル企業CEOの言葉力

Howard_Schultz

シリコンバレーにある会社でよくある光景として、4半期に一度全社員を揃えてのカンパニーミーティングがある。(スタートアップなんかだと週一、月一)ここでCEOやCFO達が4半期ごとの業績、うまく行っていること行っていないことを「包み隠さず」プレゼン。これから先何にフォーカスして、何をスコープから外すのか、クリアなメッセージと事実とともに語られる。また従業員は直接CEOに質問する機会もある。当然彼らは会社のトップである以上、いかなる質問にも答えることが求められる。そこではぐらかそうものなら「何か隠してる」、「CEOなのに把握してない」と思われ、従業員とトップの信頼関係に水を差すことになるのだ。

この部分だけでも日本企業とは様相がだいぶ異なると思うが、もしグローバル化を志向するのなら、こうした場でトップが「はっきりした」メッセージを「迷いなく」発することはものすごく重要。グローバルカンパニーは働いている人が千差万別。それぞれ異なる文化的背景を持つ。なので、クリアで短いメッセージでないと、メッセージを発する側の意図したとおりに解釈してくれないことがよく起こる。こちらでいう “Less is more” という考え方だ。

ならば、「文脈を読む」ことを前提とする日本語と近い考え方かというと、そうでもない。むしろ広告やマーケで使われるような”Punch line”の考え方に近いものだ。例えば”Build the best”という言葉。本日CEOが繰り返し使っていた言葉の1つだ。宣伝広告のマーケの人たちが一言で印象づけるために作るキメのワンフレーズ。そういうキレのある言葉を語りのなかで頻繁に使う。メッセージを極限までシンプルにしながら相手に行動を促す考え尽くされた言葉だ。中学生の英語力でもわかる単語(=誰でも分かる)に、様々な事実とストーリーを重ねて従業員に訴えかける。こちらのCEOは経営の透明性(=事実を社員と共有する)という感覚が徹底しており、その姿勢が社員に「では、自分達はこの事実の前に何をすべきか」を考えるきっかけを与える。そしてそうした行動を奨励する仕組み(責任の所在、役割分担、ゴールの明確化)や評価制度をトップは用意する。

会長、社長、専務取締役達が現場から遠いところにあり、現場への権限移譲やゴールをはっきり決めない中でいくらトップがグローバル化を叫んでも何も変わらない。一方トップが会社の現実についてクリアに語らないようでは、社員は本来何をすべきかわかるはずもない。すると「本当にこのままでいいのか?」と一抹の不安を抱えながら働くことになる。そんな会社で社員は持てる能力を発揮できるはずがないのだ。

グローバルという言葉が最近日本のビジネス系記事で見ない日はないくらい使われているが、海の向こうに行ったら日本のスタンダードを一度捨てるくらいの覚悟がないと、正直まともに戦えない。グローバルでの競争するとなると自己否定と進化をセットで回さなければ置いていかれる。そして、戦いに慣れてきたら日本のスタンダードの良いところを融合すればいい。それが自分にとっての差別化になるのであれば大いにそうするべき。この点を理解している経営者が日本には少なすぎる気がしてならない。

 

さて、今日の全社ミーティングでは、なんとスターバックスの現CEO、Howard Schultz (ハワード・シュルツ)氏がゲストスピーカーとして登壇した(上の写真)。彼の話が非常に示唆に富んでいたので、次回はその内容について書いてみる。