次の5年はコレ!世界のITの潮流を読むために知るべき10個のトレンド

The Warships in Sillicon valley
(Source: 先日のWIREDの記事から)

シリコンバレーで展開されるウェブ系の技術エリアは上図の島に代表されることは異論は無いと思う。一方、それを支えるインフラ側の技術も大きなうねりが現れている。iPad miniの発表に比べれば華やかさはないかもしれないが、インフラが変わるとその上で動くアプリやビジネスもガラっと流れを変えるインパクトがあるのでiPadとて無関係ではない。

本日ガートナが発表した以下10個の大きなうねりは、ベンダーサイドにいてもひしひしと感じるものばかり。(というか一部はうちでも率先してやっている)

詳細な翻訳は他のウェブメディアがやってくれるのではと期待して、本稿では私個人の見解でざっくりと要約を。

Source: http://www.networkworld.com/news/2012/102212-gartner-trends-263594.html

1. Disruptive

「破壊的」が1番最初に。これはDisruptive Innovation からきているのかと思ったら大間違い。もっと根本的なことを悪い意味で指摘している。何が「破壊的」か?それはユーザーエクスペリエンスです。ビジネスパーソンはスマートフォンに代表される「軽い」動作のアプリに慣れてしまい、社内で使うシステムのパフォーマンスの遅さときたらストレスがたまる一方。自分が社内で使うアプリやシステムに不具合があれば連絡するものの、解決までの時間がかかり生産性を阻害。ユーザーエクスペリエンスはBtoCの中でよく論じられるが、実はエンタープライズITといった世界でも大きなOpportunityとなっているわけです。

2. Software Defined Network

去年から今年にかけてHype CurbをたどってきたSDN。ここから5年くらいかけてSDNが本当にマーケットとしてユーザーに定着していくかの正念場。ご承知のとおり、OpenFlowは単なるインプリの1形態でしかありません。くれぐれもSDNとOpenFlowはイコールでないのでお間違いのないよう。

3. Bigger data and Storage

ここ2年くらいですっかり定着しましたね。すでにシリコンバレーでは熱いです。特にストレージ関連のベンチャーは積極採用中。マイクロソフトも最近ストレージのスタートアップを買収したりと、このエリアはまだヒートアップしそう。さらに、日本で報道されたかわからないがUSではつい最近もAmazonがストレージ障害を発生。障害が障害を呼び(snowball effect)、結局12時間ほどダウン。

Amazon outage started small, snowballed into 12-hour event
http://www.networkworld.com/news/2012/102312-amazon-outage-263617.html?source=nww_rss

Big DataがどんどんBiggerになり、それに対応するストレージ周りもスケールと耐障害性、障害対応力の両立の観点でこれからも伸びていくでしょう。

4. Hybrid Clouds

例えば先日世界で使われる携帯電話契約回線が60億件を超え、世界の人口の86%が携帯で受信可能となった現在、データ送受信量の勢いは衰えを知らない。支えるインフラとして増え続けるサーバーと、DCのコストのことは先送りできない問題。ビジネスに対するインパクトに応じて、自社で抱えなくていいならクラウドに移せるものは移す、とは自然な流れ。

5. Client Server

もはや当たり前すぎてなんだか懐かしさえ感じてしまうこの言葉。しかし向こう5年でクライアント側はもっと多様なデバイス類とその上で動く多様なOSやアプリに、サーバー側はブレードサーバーを軸に用途別にバリエーションが増えていく。

6. The Internet of Things (IoT)

“Things”は「なんでもかんでも」の意味。向こう5年でGoogleメガネ、ウェアラブル、*Siriで自動車のエンジン始動という007ライクなのものまで、コンセプトレベルだったものが実用化へ向けて動き出す。いよいよIPv6も陽の目を見る時がきた!?

http://www.viper.com/smartstart/

7. Appliance madness

アプライアンス製品にも新たな風が。パフォーマンスの良さをコスパで謳ったておいて、実は維持管理にコストがかかるようじゃダメとのガートナーの弁。そういう意味ではランニングでコストのかかるハードのアプライアンスより、Virtual Applianceがもっと主流になってくる。

8. Complexity

オラクルのDBを立ち上げるのに1600箇所もパラメータをいじくる場所があったり、シスコのネットワーク製品を使うのに2300ページものマニュアルがあったりと(ウチも人のこと言えないが・・)、製品の複雑さは増すばかり。ガートナーの調査によると、実に大半のエンタープライズ(おそらくUS Onlyの調査)が20%程度しか製品の機能を使ってない。そういう意味ではこの複雑さを取り除いてあげないとIT投資が本当に会社を強くしているとは言えない。

9. Evolution toward virtual datacenter

いわゆるDatacenter Fabricに関する議論。サーバーの仮想化が増えることはあっても減ることはない現状で、いかにそれを支えるインフラがnon-virtualと同等かそれ以上のパフォーマンスを担保してあげられるか。サーバー自身のアーキテクチャーしかり、DCネットワークもファブリック形態が主流に。

10. IT demand

PUE, DCiEといったIT製品の環境性能は今後もシビアに求められるし、このエリアはわりとざっくりとしかモニターできなかったりするので、本当はどれだけ電源効率あがったの?に対して細かく見れる基準やモニターする機能ができたりすると喜んでもらえそう。

 

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その2 – 「プロダクト」を通して世界を見る、プロダクトマネージャーという仕事

Lego x iPhone = iPhone dock
これも立派なプロダクト – http://bit.ly/P3NHAE

かれこれシリコンバレーに移り住んで6年目になるが、これまでプロダクトマネージャーの右腕として、また今現在自分がその当事者として働く中で常々疑問だったことがある。

「なぜ日本ではプロダクトマネージャーという仕事があまり根付いていないのか?」

PMもしくは、プロマネと言えば日本ではほぼ100%の確率で「プロジェクトマネージャーですか?」と言われるが、USでは、「それともプロダクトマネージャー?どっち?」と聞かれるくらいこちらでは浸透している。

この問に対していろいろな視点から答えがあり、シンプルな解はない。例えばこの仕事はいろいろな権限や役割が集中するので、日本のビジネス習慣的にそれを許さないところもある。やれるとしたら組織のトップ層くらいだろう。

ただ、特に日本のメーカーを見ていて「これは」と思うところがあるので、今日はその部分をたたき台に、プロダクトマネージャーの仕事について書いてみる。

シリコンバレーのプロダクトマネージャーが製品の立ち上げを行う時、いろいろリサーチやらヒアリングやらを行い、最終的にカスタマーが要求しそうな機能なり価格等々を議論し、スコープを狭めていく。そのプロセス「全て」に関与していく。(無論関与の度合いは会社によって異なる)

ところが、Aという機能とBという機能が最終的に残ってどちらかに絞らなければいけない場面に遭遇したとする。

何を基準に選ぶか?リスク VS 収益性? コスト? ベータテストの反応?開発スケジュールと予算?

もちろんこういった「数字」は大切な判断基準だが、実はそれだけでは決めない。ではプロダクトマネージャー達は最後に何で決めるか?

………

………

「自分でも思わず使いたくなるか?」

である。

自分がその想定カスタマーの場面にいるときに、AあるいはBを使った時に、どちらが思わず周りに話したくなるか、上司に報告(自慢?)したくなるか、というエモーショナルな部分だ。しかし、この判断はプロダクトマネージャーがどれだけユーザー自身や「ユーザーの」カスタマー、ユーザーが置かれているビジネス環境を理解しているかにかかってくる。この部分が深くないと、なぜユーザーが積極的な感情になれるかのイメージを描けない。ユーザーが使いやすい、わかりやすいという視点も大事だが、そもそも使いたいか?という根源的な問いだ。

これは数字だけでは絶対にわからなし、難しい部分でもある。プロジェクトマネージャーとの決定的な違いもここにある。(彼らはプロダクトのリリースがスケジュールと予算・リソース内に収まるよう苦心するのがメインなところがあって、「使いたいかどうか」の判断は普通しない。)

逆に「自分が使いたい」と思うレベルに達していないならば、そもそもツメが甘いと言っていい。(どうしてもそういう状況でリリースしないといけない時もあるが)

「顧客の要望に応じて」作ったからといって、それを自分が使いたいと思わなければ、大して売れない、ターゲットは積極的に買わない、興味は長続きしない。わかりやすい例で言えば、どんどん超大型化していくテレビをあなたはどこまで使いたいですか?というか、それは本当に「顧客の要望」か?

プロダクトマネージャーの仕事は「自分でも使いたくなる」プロダクトを作り、こうした思いに至る背景を、サイエンスとアートの両面から説明できることが重要。「プロダクト」を通じて世界を見るとはこのこと。ここでいう「世界」とは単に地理的な広がりやマーケットだけを意味しない。というかそれだけでは不十分。むしろ、ユーザーが抱いている「世界」を見るということ。こうして徹底的にプロダクトを叩き上げるからこそ、製品をリリースする時に腹を括れる。(それでもハズレる時があるのでこの仕事は面白く、難しいのだけど)

例えばよくある、線形な製品開発(大型化・高密度化・微細化etc)は、「自分が使いたいか」の問いにいつも答えていっているわけではない。むしろ組織の慣性によってその方向に進んでいるだけということが往々にしてある。また、プロジェクトマネージャーは途中どんなに大変でも決められたとおりにプロダクトが出来上がることが1番。それはそれで大事なのだが、こうした現象を前に、何かもやもやしたものを感じるのは私だけだろうか?

その感触とはどんなにプロジェクトのメンバーが疲弊しても、スケジュール通りにつくり上げたものが、ユーザーが「本当に」使いたいプロダクトなのか?という問題意識にほかならない。この問題意識を「使いたいプロダクト」という答えに翻訳していくのがプロダクトマネージャーの仕事だ。

よって、 理想 (使いたいプロダクトか?)VS 現実 (スケジュール・リソース) という図式ができあがり、 プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーはよくケンカする(笑)逆に、ぶつかって現実を理想に近づけるくらいの馬力がないと、良いプロダクトマネージャーとは言えないのがシリコンバレーの共通認識。

先日ノーベル賞を受賞した山中氏は「iPSでまだ一人も命を救ってない」という旨を述べていた。iPS細胞開発という技術を、「使いたいプロダクト」に落としこむところに今後プロダクトマネジメントの真価が問われるわけで、受賞は快挙であることに異論はないが、それで終わりではない。ここからがまさにプロダクトを賭けた理想と現実の戦いである。(もしバイオサイエンスの見識と経験が自分にあったらぜひ参戦したいところだが。)

「自分が使いたいか」に気づかない、気づいていても変えられない、(そもそも変更は許さない?)場面が多いことは、日本にプロダクトマネージャーが根付かない大きな理由の一つだ考えている。

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「プロダクト」を通して世界を見る、プロダクトマネージャーという仕事

“London Eye”
もうすぐ日本で公開される映画007 スカイフォール。
予算の関係で海外ロケが減り、ロンドンのシーン多しとの話も。

今回から数回にわたって、日本ではあまりメジャーではないプロダクトマネージャーと呼ばれる仕事について書いてみたい。聞いたことはあっても実際どうなの?という声にお答えしようと思う。

技術系ガジェットからキッチン雑貨に至るまで、自分は「プロダクト」を見て触って使ってみたりしないと気が済まない性分である。中でも「プロ仕様」という言葉を聞くと無性にワクワクする。例えば007で使われる細工の効いた小物とかボンドカーには、いつもストーリとは別に見てて期待してしまうのだ。そこには、至高のプロダクトを扱うことが許され、卓越した技を極めたもののみが扱えるという、何か憧れを感じるのが背景にある。使い手のテンションを高め、作り手のビジョンと共鳴するとき、きっとそのプロダクトが最も価値を出すのに成功した瞬間なのだろう。

先日1周忌を迎えたスティーブ・ジョブズは、まさにその瞬間を作るのが抜群に上手だった。シリコンバレーでは単にアップルのCEOというだけではなく、この地のプロダクトマネジメントの究極の体現者として伝説の存在となっている。新しいバージョンのiphone/ipadを初めて手にするたびに人々が驚き、夢中になった表情を見ればもはや言葉を尽くす必要もない。

ここで思い出して欲しい。以前このブログでも取り上げた「シリコンバレーで働きたいと考えるあなたに、見ておいて欲しい1枚の絵。」の記事だ。そこで下記のような絵を載せた。この、左下アップルの絵に着目。

ジョブズが真ん中にいて、全てが彼中心に周っているかのようなこの図。それこそLondon EyeのようなHub and Spoke が描かれている。実はこのモデルこそプロダクトマネジメントの究極の姿ともいえる。

なぜか?下の図*1を見ていただきたい。

先日UC BerkeleyでMBAプログラムを展開する、Haas Business School主催のプロダクトマネージャー向けトレーニングに参加した際語られていた一コマ。プロダクトマネージャーは会社のすべての機能部隊とつながり、プロダクトの発案から開発・テスト、価格付け、販売からサポートまで全てのフェーズで意見を求められ、そこでの決断が製品の運命を決めてしまう。一緒に働いてくれる各部門の人々に、「この人が作ろうとするプロダクトは面白い。一緒にやってもいい。」と常々思わせるようでないと、リリースまでおぼつかない。途中で「これはダメだ・・」と思われた瞬間に、もはやそのプロダクトの魅力は半分以下になる。また、方向性をめぐってケンカのような議論になることもある。ただ、このハブとスポークの緊張関係こそ、プロダクトマネージャーの大変さであり醍醐味とも言える。

従ってシリコンバレーから生み出される製品はプロダクトマネージャー達の血と汗と涙の結晶なのだ。

通常は製品群ごとに担当PMがつくが、スティーブ・ジョブズは自らの振る舞いがすでにプロダクトマネージャーであり、そこから逆算で組織化してしまった。CEOもしくはCTOとプロダクトマネージャーが兼任することはこの地のスタートアップではよくあることだが、アップルほどの規模でそれを実現してしまうところが彼を究極の存在にせしめた。製品のビジョンを各担当チームにしっかり植えつけ、常に高いレベルで緊張関係をリリースまで保つことは、口で言うほど簡単ではない。

またある程度の規模の組織になるどトップダウンでの製品開発は、時として危険になる。もしトップが「XYZという技術が向こう3-5年で流行りそうだから、うちもそれを取り入れたものをを作らねば」と言い出したとする。結果、XYZを取り込むのが目的となってしまい、本来プロダクトとして果たすべき役割から逸脱しやすくなる。

プロダクトマネージャーはそういった声に耳を傾けても、常に一歩引いて本当に必要なのは何か、考えなければならない。

(続く)

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*1)  UC Berkeley Executive Education, Product Managment programから許可を得て抜粋 プログラム詳細はリンクを参照。 http://executive.berkeley.edu/programs/product-management

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