異文化とマーケティングの交差点

製品をリリースするにあたって、名前はその製品の人生を決めてしまうくらい重要だ。もちろんターゲット顧客に名前を覚えてもらわなければいけないので、シンプルかつインパクトあるものが好まれる。

昨年北アイルランドはベルファーストに出張で行った時のことだ。たまたまフリータイムができたので、街を歩いていて思わず我が目を疑うものに出くわした。まさに「ネーミング命」を体現しているような衝撃。

は? 極度乾燥(しなさい)??

この店名を見た時、正直頭が混乱した。極度乾燥?しかも(しなさい)?なんで命令系?

で、この店実は今UK・アイルランドを中心にヨーロッパの若者で流行っている、れっきとしたアパレルブランド。http://www.superdry.com/

会社概要のところを読むと、

“Inspired by a trip to Tokyo in 2003, Superdry fuses design influences from Japanese graphics and vintage Americana, with the values of British tailoring.

The result – unique urban clothing, with incredible branding and an unrivalled level of detailing. Such distinctiveness has gained the brand exclusive appeal, as well as an international celebrity following.”

ということで、ジョークではなくまじめなアパレル企業。デイビッド・ベッカムやダニエル・ラドクリフといったセレブどこをがっちり捉えている。

Superdry Brad Leather Jacket – as seen on David Beckham

しかもLondon Stock Exchangeにも上場していて、業績も好調なようだ。

店内を見ると、

といったケンカ腰のポップ、

ってなことで変な日本語満載な感じで・・。果てはこんなものまで。

未加工に優れたもなにも無いと思うが・・ まーヴィンテージっぽくしたというのが言いたかったんだろう。

実際のところUK・アイルランドの人々は、日本人がこのネーミングを見た時ほど衝撃は受けないと思うが・・。日本で着てたら誰もが振り返るレベルだな。

Superdryは漢字の使い方はともかく、その字の印象がクールだということで堂々と製品にプリントしてブランドにしてしまっている。例えば日本で売っている服でフランス語か何かでプリントが入ったTシャツを「かっこいい」と感じて着るのと同じだ。(その言葉の意味は二の次で)

まだ日本には進出していないので、国内でどれほど話題になっているかわからない。もし日本に進出となると、「こんな辺な日本語を使われて非常に不愉快」という論調が聞こえてきそうだが、一方でSuperdryのマーケ的には「ターゲット層を刺激するCool Japanなデザインを施している」ということにもなる。もちろん会社としては自分たちの感性で日本語をデザインとして使っているのであって、文字に対するリスペクトがあるからこそ成り立つ。これはある意味日本語の違った価値を彼らの文化のコンテキストで見出したとも言えるだろう。

一方我々日本人としては、そもそもクールジャパンといっても日常にあるフツーのことだったりするわけで、「何がすごいの?」という感覚になる。彼らが感じた「価値」は我々にとって「盲点」なのだ。そういう盲点を察知する嗅覚を養うには、きっと異文化を一度自分の中に取り込むぐらいことをしないと気づかない、もしくはそういう異文化の人々を自分の組織・チームに融合するかということになるだろう。

せっかくCool Japanがひとつの世界の潮流になってるなら、こういう文化マターのヒネリ技を繰り出せるスキルを得られれば、きっともっと日本が世界から求められきっかけが作れそうだ。「不愉快だ」なんて言わずに、日本をもっと良い意味で売るという1つの面白いアプローチとして考えたほうがいい。

またGlobal Marketingの世界ではその国や文化に合わせてネーミングを変えるということはよくあること。USではカルピスがCalpicoという名前で販売されてるように。だが、こういう自分とは全く異質のものに価値を見出す発想の転換と、それを商品としてまとめ上げるために、言葉としての「正しさ」そっちのけで、直球でやりきるのは勇気がいることだと思う。

でもそういう誰も気付かない、誰もが二の足を踏むところに勝負を挑むからこそ、成功できるチャンスがあるというのもまた事実なのだ。

そのうち「極度乾燥しなさい」を銀座あたりで見かけるようになったら、それはCool Japan ブランドの逆輸入という現象を生むのかも。H&Mやアバクロよりインパクトありそうだ。

ちなみにこのブランド、ショップがシリコンバレーにもありました。サンタクララのValleyFair Mallにて買えます。勇気ある方はぜひ。

【書評】イノベーションを阻害する6つの要因 – Creative People Must Be Stopped: Six Ways We Kill Innovation




もしあなたが、「これはいけそうだ」というアイデアを思いつき、それをイノベーションとして形にしたい場合に何を考えるだろうか? まずはマーケット分析?予算?誰を仲間につける?等々

ところが現実は、そのアイデアを具現化する過程でもみ消される、変更に次ぐ変更を加えられて味気ないものになってしまうなんていうのはよく聞く話。ところが最近読んだ、

Creative People Must Be Stopped: Six Ways We Kill Innovation (Without Even Trying)

という本が、こんなジレンマ的状況に立ち向かうためのフレームワークをうまくまとめてると思ったのでご紹介。上記のようなジレンマを感じたことのある人は、ポイントだけでも読んでみると気づきがあるかもしれない。

著者は本書を通じて繰り返し強調していることがある。それは、「創造性は先天的なものではない」ということ。彼の言葉を使うと、故スティーブ・ジョブズの創造性は生まれつきのものではない。むしろ、いかに「自分への制約」を取り払うかにつきるという。従って、Constraint (制約) の正体を知ればおのずと各人がもてる創造性が発揮されるのだと。

そして、イノベーションを阻害するConstraintは以下のように構成される。



1.  Individual Constraints: Do They Understand Your Innovation Proposal?

制約そのものが実は本人自身に内在するというのがこのケース。具体的には、アイデアは面白いのに、相手にちゃんとその情熱が伝わるようなデリバリーをできていない。プレゼン・企画書・デモンストレーション等々。これはアイデアに夢中になって、聞いてもらう人のことを考えてるのがお粗末になるところから始まる。


2.  Group Constraints: Does Your Innovation Create Emotional Risks for Them?

そのアイデアを相手がサポートするにあたって、相手が心理的に抵抗を感じるような点にちゃんと踏み込んでフォローできているか?例えば、それが失敗すればサポートした自分の面目丸つぶれとか、地位が危うくなる、従来のプロセスを壊してまでやらないといけない理由がはっきりしない、こういった問題に対してあなたのイノベーションはどのような答えを用意するのか?



3.  Organizational Constraints: Does Your Innovation Support Their Mission and Goals?

会社にはMission statementそしてそれを実現するためのゴールと戦略がある。特に外資の場合、その戦略を実現するために各々の事業部や機能部門がどうあるべきか、相応の時間とお金をかけて考える。その上でどの優先順位で何をするか等々決まっていく。こうした会社の根幹とも言える部分と、あなたのイノベーションがどう寄り添うのか、明確さを失えばそれは会社自身があなたのイノベーションの制約となってしまう。


4.  Industry Constraints: Does the Innovation Account for Their Landscape?

はたしてそのイノベーションを考えつきそうな競合が、実はいるんじゃないか?狙うべきマーケットは明確か?もしくは、別の代替手段でもってそのイノベーションの価値は下がってしまう可能性はないか?もし既存のサプライチェーンを変更する場合、その経済的・心理的インパクトは?

こうした会社を取り囲む外側の要因に対してツメが甘いと、イノベーションは阻害されてしまう。



5.  Societal Constraints: Does the Innovation Support Their Values and Identity?

そのイノベーションが外に出た時、どのように口コミされるだろうか?利用する人々が欲しい・使ってみたいという体験を提供できるだろうか?法規制が将来的にかかってくる方向にはないだろうか?


6.  Technological Constraints: Can They Make the Innovation Perform as Promised?

そのイノベーションを具現化するために許される時間は?リソースはどの程度コントロールできるのか?InputとOutputは継続的にできるのか?(一発屋で終わらないか?)


ということで、これらの要素は冒頭のタマネギのように層となって重なっている。あなたが創造性をちゃんと発揮するためには、どの部分がボトルネックになってるのかを見極める必要があるのだ。

本書では各ポイントに対してどう対処すべきか解説がなされているので、ご興味があればぜひ読んで見ることをおすすめする。

そして、晴れてイノベーションが実現すれば、こんなことだって現実のものに・・

Terrafugia社の空飛ぶ自動車だ。

ちなみに最小構成価格 $279,000 (約2300万円)から。